交通論ゼミ ゼミ合宿2019(2日目)

 

 
 合宿2日目は岩手県岩泉町からスタート、宮古で車輛基地を見学し、三陸鉄道に移管された旧JR山田線区間を通り、鵜住居に立ち寄り、三陸鉄道リアス線の南端、大船渡の盛駅まで三陸鉄道を進んでいきます。これは、三陸鉄道の「 オリジナル震災復興研修」を合宿に組み入れたものです。
 
 この岩泉町は、3年前の2016年8月に台風10号(ライオンロック)による大雨災害に見舞われました。
「ふれあいらんど岩泉」宿直の方にうかがった話では、2011年の東日本大震災の巨大津波は海から、台風10号は山から濁流の水が押し寄せてきたといいます。「ふれあいらんど岩泉」の目の前を流れる小本川も氾濫して、ふれあいらんど岩泉近くの高齢者施設に入居していた高齢者全員が犠牲となりました。この日の小本川は清流を湛え静かに流れていましたが、NHK盛岡のローカルニュースでは、町主催の追悼式の模様が報じられました。
 この三陸を訪れるゼミ合宿は4回目ですが、実際に訪れたのは今回が3回目です。この「1の差」は、この台風10号災害での中止です。初めて三陸を訪れるゼミ合宿を企画した2016年、その時から三陸鉄道の震災フロントライン研修を組み入れていましたが、三陸鉄道・冨手さんのご進言もあり、出発前に中止を決めました。訪れる予定だった釜石などで浸水被害があり、被害の大きさにただ言葉を失いました。
 
 
ふれあいらんど岩泉の眼前に流れる小本川を高台から眺めると、清流のせせらぎが心地よく聞こえます
 
一晩お世話になった寝台列車をバックに
 
現役当時では撮影できないポイントで
 
 さて、今年の合宿に話を戻しましょう。まず、岩泉町民バスで岩泉小本(いわいずみおもと)駅に戻ります。
 
 岩泉小本駅から宮古(みやこ)駅まで、地元の利用者や観光客の方々とともに三陸鉄道の列車に乗りました。
朝の通勤・通学時間帯が過ぎたとはいえ、列車は座席の半数以上が埋まり、途中駅からも続々と乗り込んできました。摂待(せったい)駅から田老(たろう)駅までの間には新駅・新田老(しんたろう)駅が10月末の開設に向け駅工事の最終段階を迎えていました。列車はそこを徐行して進み、地区全体が巨大津波に襲われた田老駅に進みます。新田老駅に併設して宮古市役所田老総合事務所ができ、災害公営住宅などは高台にできたこともあり、田老駅周辺、とくに海岸沿いには民家は建っていません。
 
岩泉小本駅から宮古駅まで
 
 岩泉小本駅からの列車は宮古駅に着き、私たちは新しく建設された宮古市役所新庁舎につながる駅をまたがる自由通路を通って、三陸鉄道の車輛基地におじゃましました。
 今回も、三陸鉄道旅客サービス部長の冨手淳さんに一日アテンドしていただきます。冨手さんは三陸鉄道開業前年の1983年に入社された第1期生で、東日本大震災当時も宮古の本社で被災し、復旧の最前線で望月正彦社長(当時)とともに指揮に当たりました。『 線路はつながった―三陸鉄道 復興の始発駅―』を著されています。
 宮古駅に隣接した車輛基地は、旧JR山田線の移管に合わせて新設されたもので、それまで久慈と盛にあった車輛基地を集約し、ここで三陸鉄道の全26輛の整備、重要な検査をします。限られたスペースで26輛の車輛を運用しながら点検、整備する苦労話もうかがいました。
 
冨手さんから車輛基地での作業内容や苦労話をうかがいます
 
 35年前の開業当初から用いられ、「あまちゃん」でも登場した「36-100形」「36-200形」各4輛、レトロ車輛の「36-R形」3輛、東日本大震災時にクウェート政府からの原油支援の岩手県分を現金化し、津波被災で使用不能となった車輛の代替に導入した「36-700形」(クウェートの国章と感謝の言葉が車体に貼られている)、旧JR山田線の移管に合わせてJR東日本から引き継いだ同じく「36-700形」、それにお座敷列車の「36-Z形」とタイプの異なる車輛を持ち、団体の貸切列車申込みに応えながら日々の定期列車オペレーションを管理する話に、ゼミ生は非常に興味深く聴き入りました。
 三陸鉄道とJR東日本の共同使用駅で、JR東日本から移管された宮古駅構内に移り、線路の位置関係やJR山田線(盛岡~宮古)の列車の乗り入れ方や三陸鉄道の運用方法などをうかがいました。
 
宮古駅ホームからも車輛基地、留置線の全体をみながら説明を受けます
 
JR宮古駅の駅舎も路線ととも移管され三陸鉄道の駅舎となり、旧三鉄駅舎は本社として使われています
 
宮古駅前の蛇の目本店さんで昼食。三陸の海の幸が本当に美味でした
 
 宮古駅に戻り、貸切列車でさらに南下します。
 私たちだけのための貸切列車を用意いただきました。それも3輛しかないレトロ車輛の「36-R形」です。

宮古駅からは私たちだけの貸切列車です
 
 旧JR山田線の移管区間は、東日本大震災の巨大津波や津波火災によって甚大な災禍をこうむり、JR東日本が鉄道での再建に難色を示し、バス高速輸送システム(BRT)での復旧も提示される中、JR東日本が鉄道を復旧させ、三陸鉄道に承継させることになり、東日本大震災から8年経った今年3月23日に開業した区間です。この過程は、NHK総合テレビの「明日へ つなげよう」(日曜午前)の 証言記録「岩手県 レールをつなげ ~誕生 三陸鉄道リアス線~」(2019年6月30日)で取り上げられ、私たちは合宿前の事前学習として、この番組を視聴しました。
(「 三陸鉄道リアス線」でも詳しく知ることができます)
 これまでのゼミ合宿ではバス移動だったこの区間も鉄道で移動できるようになりました。
 私たちだけのための貸切列車では、冨手さんから旧JR山田線区間と旧北リアス線・旧南リアス線の違いなどを説明いただきました。
 
冨手さんからの説明を聞きながら、旧JR山田線区間を進みます
 
 宮古駅から15分ほどで、最初の停車駅・津軽石(つがるいし)駅に到着しました。この駅で15分ほど停まります。
出発して15分ほど、最初の列車交換可能駅である津軽石駅に長く停車するのは、宮古駅のホームから早く出なければ定期列車に影響するためだったそうです。つまり、定期列車が入るホームを空けなければならないとのことでした。
 
津軽石駅で対向列車とのすれ違いのため15分程度停まります
 
 津軽石駅から再び出発し、旧JR山田線を移管された区間を進みます。旧JR山田線区間は戦前に開業した区間で、明治三陸大津波や昭和の三陸大津波を技術的に克服しないまま線路を敷設したこともあり、道路と交叉する踏切が多く、踏切がほとんどない旧北リアス線・旧南リアス線の区間と異なり、列車の運行にはとても神経を使う区間であるとも、冨手さんはお話しになりました。
 
山田湾はあの日が嘘のように静かで穏やかでした
 
 貸切列車は、陸中山田駅、大槌駅でも停車して、宮古駅から90分、鵜住居駅に到着しました。貸切列車はここが終着です。
 鵜住居駅からほど近い 「うのすまいトモス」内の震災伝承と防災学習のための施設 「いのちをつなぐ未来館」で、東日本大震災当時の様子を学びます。鵜住居地区では「釜石の悲劇」と「釜石の奇跡」が存在します。「釜石の悲劇」は、低地にあった釜石市鵜住居地区防災センターに約150人が逃げ込んだものの、防災センターは巨大津波に襲われ、生存者はわずか28名という悲劇です。防災センターは取り壊され、釜石市東日本大震災慰霊碑を核とした 「釜石祈りのパーク」となり、鎮魂と慰霊の場になっています。
 一方の「釜石の奇跡」は、海沿いにあった鵜住居小学校・釜石東中学校の児童・生徒約600名が教職員の「逃げろ」「走れ」という声で高台に逃げ、中学生や小学校高学年は泣きじゃくる小学校低学年の児童の手を引き、海抜約10mの福祉施設、さらに海抜約30mの介護施設へ避難し、欠席児童生徒を除く学校監督下の児童・生徒全員が巨大津波の難から逃れました。これが「釜石の奇跡」と称えられています。
 「いのちをつなぐ未来館」では、東日本大震災で巨大津波に襲われた鵜住居小学校・釜石東中学校の物品がそのまま展示されています。東日本大震災当時はほとんどが小学生だったゼミ生には、短大生の歳になって学ぶものが多いと感じています。
 
「釜石の悲劇」と呼ばれる釜石市鵜住居地区防災センター跡地には、「釜石祈りのパーク 東日本大震災慰霊碑」が建立されました
 
鵜住居駅ホームでも冨手さんからの説明に耳を傾ける
 
「釜石の奇跡」と称えられた鵜住居小学校・釜石東中学校の跡地には、「釜石鵜住居復興スタジアム」が完成しました
 
 鵜住居小学校・釜石東中学校の跡地には、「 釜石鵜住居復興スタジアム」が建てられました。「鉄とラグビーの街」釜石は、復興の1つのシンボルとして2019年に日本で開催するラグビーワールドカップの誘致を目指し、2018年に完成したもので、ラグビーのW杯では予選ラウンド2試合が催されます。ラグビーワールドカップ2019終了後も、Jリーグエキシビションマッチや2023 FIFA女子ワールドカップでの利活用も検討されているといいます。
 復興スタジアム周辺には真新しい民家が建つようになり、路地では小学生が縄跳びに興じていました。冨手さんからは、ラグビーW杯試合時の三陸鉄道・JR釜石線の観客輸送体制を中心に鵜住居地区の現状もお話しいただきました。とくに、ラグビーW杯試合時の臨時列車運行での車輛のやりくりには三陸鉄道・JR東日本とも万全の体制で臨む点をお話しいただきました。
 
釜石鵜住居復興スタジアムを右手に見て、海岸の方を指さしながら巨大津波の説明を受けます
 
 鵜住居地区で東日本大震災当時のできごと、教訓、そして復興プロセスを学び、私たちは鵜住居駅から盛(さかり)駅まで再び三陸鉄道の列車に乗り込みました。釜石(かまいし)駅から盛駅までは、三陸鉄道南リアス線だった区間で、この区間でも巨大津波に被災しましたが、2014年4月に全線復旧しました。
 旧JR山田線区間の釜石~宮古が三陸鉄道リアス線の一部として復旧開業したことで、久慈から大船渡の盛まで163kmも三陸鉄道で乗り通すことができ、全区間を運行する列車もあるため、復興地観光にも一役買っているようで、盛まで向かう列車も観光客や地元の方々が多く、2輛編成の列車が賑わっていました。
 この三陸鉄道の営業区間163kmという長さは、大手民鉄16社と比較すると、近鉄、東武、名鉄、東京メトロ、西武に次ぐもので、南海や京成、阪急よりも長いことになります。全国の第三セクター鉄道や地方民鉄では最長の長さとなります。
 前日の久慈駅から岩泉小本駅までを含む2日間で163kmを乗り通して、私たちは盛駅に到着しました。ここで冨手さんとはお別れとなりました。
 盛駅は、JR大船渡線(BRT)と三陸鉄道、岩手開発鉄道(貨物鉄道)が集まる駅で、JR大船渡線ホームはBRT車輛(バス)が乗り入れられるよう線路を撤去、嵩上げされアスファルト路面となっている一方で、三陸鉄道の従来からの(鉄道)ホーム、そして貨車がつながって停まっている貨物鉄道があるという全国的にも珍しい光景で、ゼミ生たちは興味津々の様子でした。そのため、全国でもここだけといわれるBRTと線路が並行する踏切も存在します。
 盛駅から1駅離れた大船渡(おおふなと)駅までJR大船渡線BRTで移動し、きょうの宿泊先であるホテルに入りました。最終日の3日目は、大船渡から気仙沼を経て三陸南部をさらに南下していきます。
 
【追記】
 台風19号は、関東地方、福島県、宮城県、岩手県で、河川の決壊や溢水をもたらし、多くの方々が犠牲となり、数多の家屋や田畑が浸水しました。
 鉄道路線もJR北陸新幹線やJR中央本線、東武日光線などが不通となりました。私たちが訪れた三陸鉄道でも線路の路盤流出などは77ヶ所、電力信号通信設備も15ヶ所で被害を受け、総延長の約7割に相当する、旧北リアス線・久慈~田老、旧山田線・宮古~釜石で列車の運行が長期間できない状態が続いています(通学生向けの代行バスを運行)。
 一日も早く三陸鉄道が再び163kmの三陸沿岸を結び、地域公共交通の役割を務め続けていくことを願わずにはいられません。
 台風19号災害で被災された方々のお見舞を申し上げますとともに、各地で寸断された公共交通網が一日も早く復旧されますよう、また復旧作業の安全をお祈りいたします。
 
 
 

2019年10月14日
 
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