大学入学共通テストで鉄道の時刻表！？

 
先日、大学入学共通テストが実施されました。国公立大学志望者をはじめ、多くの人が受験するこの試験で、なんと、明治時代の鉄道の時刻表が出ました！
以下のようなタンク機関車（きかんしゃトーマスと同じです）が活躍していた時代の話です！

科目は、昨年は14万人以上が受験した「日本史B」です。
「日本史B」とは、原始時代から近現代まで、日本史全体をカバーする科目です。
多くの受験生の目に触れるこの科目で史料として提示されたのは、1872年（明治5年）の、新橋（汐留）～横浜（桜木町）間の列車の時刻表でした！

その問題では、太陽暦の採用時期や、乗客に求められた規律（時間を守ること）についての正誤が問われています。当時の時刻表は上の通りですが、共通テストでは、受験生が戸惑わないように現代の漢字・仮名遣いに改められています（字→時など）。
この時刻表からは、新橋～横浜間の所要時間は53分だったことがわかります。今の感覚からすると長い（遅い）ですが、それまで東京と横浜の間は徒歩で1日かけて行き来するしかなかったわけですから、革命的な出来事です。
終点に着いたため降りるように促された乗客のなかには、こんな短時間で着くはずがないと思って、なかなか降りなかった人もいたそうです！
さて、この年の9月12日（太陽暦10月14日）に、明治天皇のお召列車が走行しました。それを記念してこの日はのちに「鉄道の日」になりました。いろいろなお得な切符や珍しいイベントが開催されますよね！　
もっとも実際には同年の5月7日（太陽暦6月12日）から営業運転は開始されていました。その4か月の間にも何度もダイヤ改正や新駅開設がなされました。そうしたきめ細やかな運用は、今の日本の鉄道に通じるものがありますね！
今回は、共通テストという全国規模の重要な試験において鉄道が取り上げられました。しかしこれは、鉄道「を」知る、つまり「鉄道に関する知識を身につけることが大事だよ！」というメッセージとは限りません。鉄道「で」知る、つまり、「鉄道に関する知識を得ると、いろいろな領域や近代史の理解の助けになるよ！」というメッセージかもしれません。
鉄道に関する知識は、私たちの近代化の足跡をたどる楽しい手掛かりになります。たとえば当時の「ステーション」の絵を見ると、洋服を着た人は意外と少ないことが分かります。すべてのものが同じペースで近代化したというわけではない、ということが五感で理解できて面白いですよね！

今は、ネットでいろいろな史料に接することが出来る時代です。そうした史料の読み込みや政策への理解を深めることができるのは、経済学や情報科学や歴史学など多様な学問分野の専門家が集まる本学の強みです！　鉄道「を」学ぶことと、鉄道「で」学ぶことを高度に両立できる恵まれた環境の本学に、ぜひお越しください。体験入学会やオープンキャンパスなど、さまざまな機会を用意してお待ちしております。

【参考文献】
国立公文書館「汽車運転時限并賃金表上達」
曽田英夫『発掘！　明治初頭の列車時刻表』交通新聞社、2016年
立斎広重「東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図」国立国会図書館デジタルコレクション
日本国有鉄道『日本国有鉄道百年史』第1巻、日本国有鉄道、1969年
 
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