交通論ゼミのゼミ合宿では、毎回、三陸鉄道を訪れています。4回目となる2019年度の合宿の様子を紹介しましょう。

 
（交通論ゼミ担当教員より）

　私が三陸へのゼミ合宿を続けている理由は2つあります。

　1つは、地域公共交通の現状を自分たちの目で見て、感じて、学びとってほしいからです。

　三陸に限らず、大都市圏以外の地方各地は、高齢化・人口減少に直面し、鉄道やバスの地域公共交通の「衰退」が問題視されています。そして、そういった地域では「マイカーなしでは生きられぬ」といわれるほど、マイカーが前提の社会構造となっています。東京池袋の短大では、そういった地方をつぶさに学ぶことができません。「地域公共交通を日々支える人々の姿を間近に感じてもらいたい」。都市公共交通を日々利用している学生に、地域公共交通のありのままを学びとってほしい。地域の人々と温かく触れ合いながらも、輸送業務の最大の使命である安全のため厳正な執務に励み、不断の修練を続けている人々の姿を見て、感じてほしい。そういう考えからです。

　そしてもう1つは、東日本大震災から復興していく現地を学んでほしいからです。

　マグニチュード9.0、千年に一度ともいわれる巨大地震がひき起こした巨大津波は、1万8,000を超える人々の「いのち」、東日本太平洋沿岸の人々の営みを奪ってしまいました。そして、望みが絶たれるような悲しみの淵から雄々しく生き抜こうとする人々がいました。

　「2011年3月11日」から8年半が過ぎようとし、沿岸の姿も変わっていきました。また、そんな変わっていく姿を、私たちがメディアを通じて知る機会も減っていきました。だからこそ、復興の今を学びとってほしい。なにより、自然への畏怖の念を忘れないでほしい。

　東日本大震災のあと、この8年半で、熊本地震、北海道胆振東部地震だけでなく、西日本豪雨も含め、自然が私たちに試練を与え続けています。千年に一度ともいう大きな災禍を経験した者の一人として、後世に伝えていくことが自分の使命だとも思います。だからこそ、復興の今を学び、交通事業に携わろうという前に、「いのちの重さ」をあらためて知ってほしい、交通事業はその「いのち」を預かる重く修練を積み重ねていく職務だということもあらためて知ってほしい。

　私は、ゼミ生に三陸沿岸や東日本太平洋沿岸を指す言葉に「被災地」という言葉を使ってきませんでした。「被災者」は言わずもがなです。人々のお情けに預かるイメージを強く感じ、8年経た今、「被災地」「被災者」という言葉でひとくくりにしてはいけないと考えているからです。

　1万8,000を超す人々の「いのち」を奪った自然の恐ろしさを伝え、「復興地の今」を見てほしい。いずれ、「2011年3月11日」以後に生まれた学生が入学します。ちなみに2019年のゼミ生はほとんどが小学生でした。小学生なりに体験したことと、短大生となった今、感じ学ぶことは異なるはずです。

　このように考えて、続けられる限り、ゼミ生とともに三陸を訪れることにしています。

1日目　池袋～大宮～二戸～久慈～岩泉

2日目　岩泉～宮古～釜石～盛～大船渡

3日目　大船渡～気仙沼～柳津～古川～大宮～池袋