鉄道総研見学
去る2月19日(水)、交通論ゼミの有志が、鉄道総研フェローで、一般財団法人研友社会長でもある垂水尚志氏にお招きいただき、国立市にある公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)国立研究所を見学してきました。
(国鉄時代から開発されてきたリニアモータ推進浮上式鉄道の試験車をバックに)
3月に卒業を控え、内定先交通事業者の事前研修などで全員の参加がかないませんでしたが、ゼミ生9名と担当教員の10名でお邪魔しました。
鉄道総研は、1907年に帝国鉄道庁鉄道調査所として創設されて以来、国内外の鉄道技術開発を常に先導してきた研究所です。安全でかつ高速に運行できる「新幹線」(高速鉄道)の技術は鉄道総研の前身である国鉄鉄道技術研究所が開発してきたものです。国鉄改革により、国鉄本社の技術開発部門と鉄道技術研究所などの業務を継承する法人として1987年に発足しました。
国立研究所は、東京ドーム4つ分という広大な敷地に、試験線の線路に囲まれるよう、実験設備や実験棟があります。この実験設備や実験棟の建物出入口近くには自転車が停められていて、職員の方々の移動には自転車が活躍しているそうです。
私たちは鉄道総研の説明VTRを拝見したのち、バスに乗り込み、最初に「車内快適性シミュレータ」に案内されました。その途中、緑が溢れる道路は「井深通り」と名づけられていて“IBUKA Street”の看板もあります。「井深」は、ソニーの創業者で鉄道総研の初代会長を務めた井深大(1908―97)氏にちなむもの。こういったところにも、技術開発のスピリッツを感じずにはいられません。
「車内快適性シミュレータ」は、振動や温度・湿度、騒音など列車内の環境要因を模擬的に発生させる装置で、巨大スクリーンに映し出される画像とシミュレータ装置が連動して動き、列車内を再現した装置内に座っていると、まるで本物の列車に乗っているかのよう。本学にも鉄道運転シミュレータがあり、「鉄道基礎」などで活用しています。当たり前ですが、こちらの装置がはるかに上の性能でした。
次に、非電化区間も走行できる電車「架線・バッテリーハイブリッド電車」に乗り込んで説明を受けました。このハイブリット電車は既に実用化されているものもあり、JR東日本のEV-E301系やEV-E801系、JR九州のBEC819系(DENCHA)がそれらにあたります。鉄道総研のハイブリッド電車は路面電車タイプで、路面電車タイプの蓄電池ハイブリッド電車が実用化されると、ライトレールやトラムから給電のための架線がなくなり、町並みがすっきりしたものになるでしょう。
さらに、震度7クラスの地震動を起こせる「大型振動試験装置」は、日本のような地震大国とも呼ばれる国で、地震動から高速鉄道を安全に速やかに停止させるためにも必要な模擬実験を繰り返し繰り返し行うための装置で、国内では防災科研のE-ディフェンスに並ぶ大きな装置だそうです。
実際の試験車輛を載せて最高速度500km/hまでの仮想走行試験ができる「車両試験装置」では、偶然にも試験が行われていないときだったため、回転する円形の「線路」を間近に拝見することもできました。最後に最多時間雨量300ミリの雨を再現できる「大型降雨実験装置」を拝見しました。この装置では、鉄道の盛り土をどう補強すればより降雨に強くなるのかを実験する装置で、私たちは実際に時間雨量300ミリの「豪雨」の中を歩かせてもらいました。2011年に新潟県内で観測した10分間雨量の最多記録が50ミリですから、この最多記録と並ぶ雨量を模擬体験できるのは貴重な経験でした。
広い研究所内をおよそ2時間半かけてご案内いただきました。しかし、見学している時間はあっと言う間で、もうこんな時間になってしまったというのが正直なところでした。
ご多用のところ、この見学にご協力いただきました鉄道総研職員の方々、またご紹介いただきました垂水会長には、この場をかりてあらためて御礼申し上げます。
後日、見学に参加したゼミ生から感想が寄せられました。
今回の鉄道総研の見学では、小学生の頃から抱いていた夢を叶えることができて、とても嬉しく思いました。私の「鉄道総研に入る(仕事をする)」という夢は高校受験で某高校に落ちたことがきっかけで叶わぬものとなってしまったためです。見学した研究は、どれも小学生の頃に記事で読んで「鉄道総研に入りたい」と思うきっかけとなった研究で、今回はこれらの研究をより近い場所で見学することができ、感無量でした。また、「モノづくりを通じて誰かを喜ばせたい」という当時の純粋な気持ちを思い出させてくれた貴重な経験でもありました。今回の見学に関係するすべての方々には感謝しかありません。
鉄道総研は、我々が想像できないようなデジタル化を駆使した近未来の研究を行なっているイメージが強かった。実際に見学させていただくと、視覚や振動によってあたかも自分が電車に乗っているような気分にさせて乗り心地を改良する装置など、大規模かつ簡単には仕組みが理解できないものが多かった。しかし、雨量計は2つの容器が水の重さにより交互に転倒する回数を数えて雨量を測るという構造が簡単に理解でき、また、アナログ的な要素があると思った。大規模な装置を用いた実験により技術革新や利便性の向上につながることも多いと思うが、案外簡単な構造であっても実社会で活躍している技術があることを学んだ。
座学で学んでいくこともとても大切なのですが、こういったさまざまな現場で学ぶことも、それに並ぶほど大切なことだと、引率して痛感したものです。
座学で学んでいくこともとても大切なのですが、こういったさまざまな現場で学ぶことも、それに並ぶほど大切なことだと、引率して痛感したものです。

(山梨リニア実験線で走行した最初の試験車「MLX01」をバックに。左前列が垂水会長)
※写真掲載は、事前に鉄道総合技術研究所にご了承いただいております。
2020年03月02日
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